中国人妻の里帰り出産、日本の産院選びと言葉の壁への備え方
中国人の奥様との結婚生活のなかでも、出産は特に大きな節目です。当相談所でも「妻の出産をどこで迎えるべきか」「日本の病院で言葉は通じるのか」というご相談を、これまで数多くいただいてきました。奥様にとって出産は、慣れない外国での一大イベント。不安を感じるのはごく自然なことですし、その不安をどれだけ軽くしてあげられるかは、ご主人の準備にかかっている部分も少なくありません。
この記事では、里帰り出産と日本での出産それぞれの考え方、日本で出産する場合の産院選びのポイント、そして言葉の壁への具体的な備え方を、20年以上国際結婚のご夫婦を見てきた立場からお話しします。なお、妊娠・出産に関わる医学的な判断は個人差が大きいため、具体的なことは必ずかかりつけの医療機関にご確認ください。
里帰り出産か、日本での出産か——まず夫婦でよく話し合う
中国人の奥様の場合、「里帰り出産」は中国のご実家に帰って産むという選択になります。お母様のそばで、慣れた言葉と食事のなかで産みたいというお気持ちは、とてもよく分かります。一方で、国をまたぐ里帰りには日本国内の里帰りとは違う注意点があります。
- 妊娠後期の飛行機搭乗には各航空会社の規定があり、診断書が必要な場合があること
- お子様の国籍手続きや出生届など、海外出産特有の手続きが発生すること
- 出産前後の数か月、夫婦が離れて暮らすことになり、ご主人が立ち会えない可能性が高いこと
- 日本の妊婦健診の助成や出産育児一時金の扱いについて、事前に自治体や健康保険組合への確認が必要なこと
どちらが正解ということはありません。大切なのは、奥様の気持ちを十分に聞いたうえで、費用・手続き・体調面を夫婦で一緒に整理することです。「日本で産むのが当たり前」と決めつけず、まずは話し合いの場を持つことをおすすめします。ここからは、日本で出産する場合の備えを中心にお話しします。
日本で出産する場合の産院選びのポイント
外国語対応の有無を確認する
まず確認したいのは、中国語または英語での対応があるかどうかです。地域によっては中国語を話せるスタッフのいる病院や、外国人の患者さんの受け入れ経験が豊富な病院もあります。病院のホームページに記載がない場合も、電話で「妻が中国人ですが、受診は可能でしょうか」と率直に尋ねてみてください。受け入れ経験の有無だけでも、安心感がずいぶん違います。
医療通訳・翻訳サービスの有無
大きな病院では、医療通訳者の手配や、タブレットを使った遠隔通訳サービスを導入しているところが増えてきました。また、自治体や国際交流協会が医療通訳の派遣制度を設けている地域もあります。お住まいの市区町村の外国人相談窓口に問い合わせると、地域の情報を教えてもらえることが多いですよ。
見学や健診で「相性」を確かめる
制度面だけでなく、奥様ご本人が「ここなら安心できる」と感じられるかも大切です。妊婦健診の段階から候補の産院に通い、スタッフの雰囲気や説明の丁寧さを確かめておくと、出産本番を落ち着いて迎えやすくなります。分からないことをそのままにせず、質問しやすい病院かどうかも一つの目安です。
言葉の壁への具体的な備え方
翻訳アプリを「事前に」使い慣れておく
音声翻訳アプリは心強い味方ですが、本番でいきなり使うと操作に手間取りがちです。健診のたびに夫婦で使ってみて、医師の説明をどう翻訳するか、練習を重ねておきましょう。ただし、医療用語は誤訳が起こりやすい分野です。翻訳結果に違和感があるときは、必ず医師や助産師に確認し直す姿勢を忘れないでください。
出産用の単語リストを夫婦で作る
「陣痛」「破水」「いきむ」「帝王切開」「無痛分娩」など、出産の場面で出てくる言葉を、日本語・中国語・ピンインの三つで並べた一覧表を作っておくと、いざというときに指差しで意思疎通ができます。奥様が伝えたいこと(痛い場所、不安なこと、希望)も同じ形式でまとめておくと、陣痛で言葉が出にくいときにも役立ちます。作った表は印刷して母子手帳に挟み、病院にも一部渡しておくと安心です。
バースプランを言葉の面から準備する
多くの産院では出産の希望を伝える「バースプラン」を提出します。ここに「日本語の理解は日常会話程度」「重要な説明は夫の同席時にお願いしたい」といった言葉の事情を書いておくと、病院側も配慮しやすくなります。
出産前後に夫ができるサポート
言葉の壁がある分、ご主人の役割は通常以上に大きくなります。次のようなことを意識してみてください。
- 妊婦健診にできる限り同行し、医師の説明を一緒に聞く
- 入院手続き・書類記入・費用の確認など、事務的なことは夫が引き受ける
- 立ち会い出産が可能か、病院の方針を早めに確認しておく
- 産後は中国式の産後養生「坐月子(ズオユエズ)」の習慣を頭ごなしに否定せず、奥様やご実家の考えを聞きながら、日本でできる形を一緒に探す
- 義理のお母様が来日して手伝う場合は、ビザや滞在の準備を早めに進める
特に産後の過ごし方は、中国と日本で考え方の違いが表れやすいところです。文化の違いを「どちらが正しいか」で争うのではなく、「妻の体と心が休まるにはどうするのが良いか」を軸に考えると、話がまとまりやすいように思います。
まとめ:準備の一つひとつが、奥様への何よりの愛情表現
異国での出産は、奥様にとって想像以上に心細いものです。だからこそ、産院を一緒に探し、単語リストを一緒に作り、健診に付き添うといった準備の一つひとつが、「あなたを一人にしない」という何よりのメッセージになります。
出産や医療に関する具体的な判断は、必ず医師・助産師・お住まいの自治体にご確認いただくとして、夫婦の話し合いと心の準備は今日からでも始められます。お二人にとって、出産が国際結婚の絆を一段と深める経験になることを心から願っています。国際結婚後の生活についてのご相談も、CHINA-NETまでお気軽にお寄せください。
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